23 食育論議『お食事』を考える!
                                    
 五十嵐 桂葉   日本栄養士会連盟理事
 
 今、何故食育か?食が健康管理のために栄養素から眺め、食品選択をする習慣がついてきたことは大変良いことであることは間違いありません。栄養素は体の中で大活躍し、良い選択であれば、体力回復・防衛体力の増強を約束してくれます。しかし、食は体質の改善には特効薬ですが、心の改善には今一つ無力なのです。 適正な栄養素には健康が約束され、健康寿命の延長にとって主役でありますが、心の健康は栄養素のみでは満たされません。その主役は「お食事」です。

 食事が食品を用い、調理されて料理になり、料理がご飯を中心にした主食とたんぱく質を中心にした主菜、そして野菜や海藻を中心とした副菜を添えて、献立にした組合わせがほぼ栄養素の理論にかなう取り合わせであることが、多くの人に周知されてきました。しかし、食事の忘れ物がありました。満腹すれば、ごく自然に成長するものと無意識に考えていた食事のもう一つの重要な忘れ物といえる部分に気がついてきました。

 それが食育です。食事教育=栄養素教育だけでもなく、食事教育=食品選択教育でもない部分が見えてきたのです。
 歩きながら食べる食事、スタンドでかき込む食事、地面にカッブラーメンの器を置いたままの食事、デパートの階段の通路に座っての食事、孤独に食べる食事の風景は、冷え冷えした空気を感じます。食事は「お食事」の部分が消え、「人間の餌」の部分が現れてきた、とも考えられる現象と見て良いでしょう。

 「『頂きます』はどうして食事のときに言うの」と小学生が先生に尋ねました。さて先生はどのように答えたのでしょうか。こどもが大人になり杜会人となって生きていく支えとなる「心の成長のため」の答えと、「体の成長のため」の答えとは異なります。「こころも豊かになるバランスの良い食事」環境は何かを考えて見ましょう。
図1から何を見ていただけるでしょうか。
    
                            図1、食の四つ葉のクローバ

 四つ葉のクローバ図は、食や食生活の成立が多くの因子に支えられていること、その条件のいずれが欠けても、安定しない、不安の残るものがあることに気づきます。経済も、科学も、文化も、伝統も、化学も、多くの人のご苦労と人間愛の上に成り立っている努力を感じ取る感覚の喪失が見えてくる恐怖にも似た感覚を味わっている人も多いのではないかと感じます。
 人々の生活や人の思い、研究の数々、労働の数々が陰に隠れているのを感じられ、そこに気づくことで、食育教育的な答え、健康寿命の延長の答えの差となるのかな?と考えています。これらの幾つかを、時には全てを、総合的にとらえて理解し、納得し、そして伝えていく英知の育成が「食育」ではないかと思います。 ここでの緒論は、主食十主菜十副菜の1〜2品が揃った(これまでほぼ栄養素の理論値90%〜95%は完成されます)食事を皆で楽しくわいわい!!と感謝しながらいただくことです。

 さて、次に食育基本法についてお話しておきましょう。
食育基本法は平成16年5月中に試行される予定であったのが、今国会の年金問題、イラク派遺問題の影で、後送りになり、臨時国会にて審議されることになっているとの情報をえています。前文の一部を紹介しましょう。「二十一世紀におけるわが国の発展のためには、子供たちが健全な心と身体を培い、未来や国際杜会に向って羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたり生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。

 子供たちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を付けていくためには、なによりも『食』が重要である。今、改めて、食育を、生きるうえでの基本であって、知育、徳育及ぴ体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。

もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子供たちに対する食育は、心身の成長及ぴ人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたり健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。

  以下、…栄養の偏り、情報の氾濫、H本の豊かな地域の多様性や味覚や文化の失う危機にあること、その解決ゴールを食環境・健全な食生活・都市と農村の共生と交流・食糧の自給率の向上・国民の一人ひとりの意識改革・自然の恩恵---家庭と保育園・学校・地域を中心に食育に取り組む・…」などが記され、食育推進会議の長は総理大臣である旨としています。

 (国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成)(食に関する感謝の念と理解)(食育推進運動の展開)(子供の食育における保護者、教育関係者などの役割)(食に関する体験活動と食育推進活動の実践)(伝統的な食文化、環境と調和した生産などへの配意及び農山漁村の活性化、自給率向上への貢献)(食品の安全性の確保などにおける食育の役割)(国/地方公共団体/ 教育関係者など及び農林水産漁業者/食品関連業者/国民の責任の責務)(国・都道府県・市町村での食育推進基本計画)(家庭・保育園など・地域における食育推進と食生活改善の取り組みの推進)・…などに対して条項を規定しています。

読者の皆様はこれをご賢になり、どう感じられるでしょう、私自身は、このことは国が本腰を入れていることの証ですが、この法律のあることの喜ぴと、こんな当たり前なことを法律で決めねばできないのかと憤りを感じる両者が胸にあります。