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江南和幸(えなみかずゆき) 龍谷大学理工学部教授 |
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環 日 本 海 アカデミック・フォーラム
江南
和幸(世話人代表)
ただいまご紹介いただきました江南でございます。環日本海アカデミック・フォーラム世話人代表ということで、一言ご挨拶いたします。本日の主催団体の1つの環日本海アカデミック・フォーラムというのは、初めて名前を聞かれる方もあるかと思いますので、少しだけご紹介をさせていただきます。
当フォーラムは京都府の提案により1995 年秋に発足いたしました。以来、京都を中心とする日本全国の大学の研究者、最近では海外の会員の方も含めて、フォーラムの会員になっていただいています。さらに加えて自治体と各経済団体、企業のスタッフの方々が京都のフォーラムに相集いまして、日本海を取り巻く地域を巡る学術文化、産業経済、地域振興、およそこの3つに関しまして、あらゆる問題の研究会を開催する。それから、本日のような国際シンポジウムをすでに何回かやっています。また、環日本海地域の研究に関して京都府下の大学への研究助成など、発足わずか4年でありますが、大変に中身の濃い活動をしております。
事業の1つに、3年前から始まりました環日本海講座があります。これは、大学コンソーシアム京都と共同の事業でありまして、京都の大学に通う学生の皆様に我々フォーラムに集まる研究者の研究成果を広く公開しまして、若い学生の皆様に環日本海学というものに目覚めてもらおうという企画です。昨年と本年との2回にわたり、実は本日の主題になっております環境問題について、環日本海地域の政治と環境、環日本海地域の経済と環境という2つの課題を2年間続けて講義をいたしました。
どちらも夏の暑いさなかに集中講義をするわけです。このごろの学生は、私たちが講義をしておりましても授業を受ける態度が大変あやふやで困ったものですが、この講義に限っていうと、大変に輝いた目を持った学生が多数詰めかけまして、おかげで講師陣も思わず時間を超過する。そうすると学生はブーイングをするのですが、この講義に関していえば、どんどん時間を超過するような大変に熱い講義が持たれました。これは、フォーラムに集まる先生方の大変ユニークな研究の魅力ということもあるのですが、やはり今日の環境問題が人類の存亡すら招きかねないということで、それに対する強い危機意識を学生が持っていることの表れかとも思います。
いわゆる地球環境問題というのは今に始まったことではなく、およそ1万年前に人類が農業を発明して自然を開拓したということに始まるわけですが、今日私たちが直面する環境問題というのは、人類の歴史から見ればごくわずか250
年前の産業革命に始まる工業化が地球にもたらした負の遺産ではないかと思います。
産業革命は同時にヨーロッパに資本主義を花開かせるわけですが、この資本主義は、ご存じのようにひたすら富を求める道をまい進することをその生命としております。富の希求の行きつくところは物心崇拝フェチシズムであるということは経済学で教えるところですが、まことに今日の市場原理万能の経済学、勝者の経済学という流行は、ほとんどこの予言の正しさをそのまま実行しているかのように思われます。
物心崇拝の向こうというのは、ギリシャ神話のミダス王の故事にならうと、命の死に絶えたきらきらと黄金色に輝く地球ということになるのかもしれません。250
年の工業化がもたらした負の遺産、身近なところでは1960年代日本を襲った公害、今日もなお続く国土の破壊、国境を超えて、日本海を超えて行き交う工業汚染、地球の温暖化、酸性雨などなどであります。
しかし、これらの環境問題はどれ一つ取っても、旧来の経済原理ではどうも生きていけそうにないということを強く示唆していると私には思われてなりません。ただし、それでは私自身が新しい経済原理を見つけたかというと決してそうではありません。ぜひ、このシンポジウムで新しい我々の生き方を見つけていただきたいと願ってやみません。
私は龍谷大学という仏教の教えをよりどころとする大学に勤務しております。私自身は理工学部で金属材料工学が専門です。ある意味では大変に環境を乱す産業のもとになる学問をやっております。もとより仏教者ではありませんが、日本のことわざで「門前の小僧習わぬ経を読む」というのがありますので、少し仏教の言葉を覚えました。それが実は大変に環境に関係があるのでちょっと紹介させていただきたいと思います。
今日、環境問題を解くキーワードとして「共生」という言葉があります。これは英語にもなっておりますので、大変広く皆様の耳にも入っている言葉だと思うのですが、実はもともとは仏教用語なのです。最初にこの言葉が生まれたもとは、中国の唐時代の高僧に善導大師という方がいらっしゃいましたが、その方が『往生礼讃偈』という著書を著しまして、そこに「願わくばもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん」ということを言っております。この「ともに往生せん」から、仏教ではこれを「ともいき」と読んで、「共生」という言葉がそこから生まれたと伺っております。
日本海を渡った仏教は比叡山の僧たちにより、日本流に解釈されて、「草木国土ことごとく皆成仏す(草木国土悉皆成仏)」という日本語にこれを直します。「成仏」というのは仏になるということではなく、現代流に解釈すれば命を全うするということですので、やはり、これも我々が今日広く理解する「共生」ということを表していると私は思っております。
では、この「共生」というのは仏教者の専売特許かというとそうではありません。日本海に対面する一つの国、古くからキリスト教の国であるロシアでも同じ思いを吐露する人がおりました。『復活』という大変に有名な小説で、最後にキリストの福音をうたったトルストイがその人です。トルストイは、晩年、日本の白樺派との交流を深めて深く東洋思想に傾斜するのですが、福沢諭吉が脱亜入欧を説いて今日の日本の農業国から工業国への転換の思想的先導を行ったのとは全く逆に、脱欧入亜という夢を見たということがいわれております。彼は人と自然との関係において、今日なお示唆に富む次のような言葉を残しております。
「幸福の第一の、そして広く認められている条件とは、人間と自然との関係を乱すことのない生活、すなわち広い天空の下、太陽と新鮮な空気の下、大地と草木と生き物とともにある生活を送ることである」というものであります。 これもまた、今日でいう共生の思想にほかなりません。むろん環境問題の実際的解決方法はこれまで皆様言われたように、哲学的論議ではなく、実務的な実際的な議論が不可欠で今日のシンポジウムがあると思われますが、しかしながら議論の出発点にあたって、
日本海をはさんで相対する3つの国の賢人たちが図らずも人類と自然との共生の思想を共有したという事実を、ぜひ本日のシンポジウムにご参加の皆様の心の隅にとめていただきたくご紹介させていただきました。
本日のシンポジウムが実り多いものとなるよう願う次第であります。これでご挨拶を終わります。ありがとうございました。
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龍谷の森 龍谷大の取り組み
本当の大学開放始まった
「龍谷の森」は、大津市という都市近郊にあって、大学という知識の集積があるところが所有しているため、市民から期待を寄せられている。
講演で河合先生がお話しになった「森あそび」は、まさしく「龍谷の森」で取り組んできた活動だ。大学で「あそび」というのは、矛盾があるように思われるかもしれないが、森の中での知的な冒険と発見は、マネーゲームなどでは得られない喜びを価値とする学問だ。子どもたちには、木を切ることで森が再生するということや、本当の命があることを知ってもらった。また、市民との交流を通し、森は人に生きる力を授けてくれるということを教えてもらった。さらに、森の持つ「癒やし」の力について、滋賀医科大学と共同研究を始めた。
森を通して、本当の意味での大学開放、理想的な大学運営が始まったと考えている。
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瀬田里山の環境計測
龍谷大学理工学部:岩本 光弘,江南 和幸
緒言:今からおよそ10000年前,人類は自然史から抜け出し,独自の人間活動を開始した.人類は樹上生活を捨て,草原に降り,農業を発明し,もとの棲みかの森林を切り開き,プロメテウスに教わり火をおこし,これまで地球上のいかなる生物も行わなかった,単独の種による地球
の支配を開始した.
さらに下って今からおよそ300年前,ヨーロッパに資本主義という怪物が発明されると,地球の様相は地球の自然史の速度をはるかに越える速度で変化を始めた.植物と動物と菌類との間のゆるやかな物質循環の平衡関係が崩れ,自然循環が必要とする量をはるかに越える炭酸ガス
の蓄積,自然の状態では生成しにくいNOx,天然には存在しない無数の化合物が人類の「経済活動」という名前の欲望のもとに作られきた.
19世紀に本格化する産業革命以来,じわじわと,しかし決して後退することなく進行した地球温暖化は,全くのところ人類の経済活動がもたらしたものである.産業革命時代に比べわずか0.5〜0.6℃の地球の平均気温上昇は地球の大きさにこれを掛ければ,その効果は想像を越える大
きさとなる.
本年3月12日のアメリカの民間研究所地球政策研究所の発表によれば,「世界各地で氷河が予想以上に後退し,南極や北極の氷も急速に溶け始めている」,「アラスカ,カナダ北部の巨大氷河の融解の加速で1990年以来,融解による海面上昇は毎年0.32mmで予想の2倍であった」
,「ヒマラヤのある氷河では1998年1年間に20mの氷河の後退と,それまでの5年間の後退量を越えた」,「アフリカのキリマンジャロ山の氷河は2000年までに33%が失われ,このままでは15年以内に消失」 という(3月12日時事通信発).
地球温暖化は,気温上昇,氷河後退といった物理的な変化をもたらすだけでなく,異常気象や,それによる自然災害などを引き起こし,生態系の基盤を脅かすという,人類社会が直面する最も大きな問題のひとつである.温暖化によるこれらの影響を最小限にとどめるには,温室効果ガスの大幅な削減,ガスそのものの除去が求められる.そのためには,現在の経済・社会を大きく転換し,持続可能な社会に変えていく必要がある.
本研究では,1997年12月の京都議定書でもCO2の吸収源として認められている,森林また都市のヒートアイランド現象緩和にも効果があるとして注目されている小規模な屋上庭園の樹木群がもたらす,気温,地温への影響を,日本人が古くから活用して自然との共生を得てきた里山にモ
デルを求めて,検討するものである.
幸いなことに,龍谷大学瀬田キャンパスは残された貴重な瀬田丘陵に里山をもつこととなり,里山を古きよき時代を懐かしむ対象としてではなく,未来を見つめる科学の対象とすることが可能である.また,キャンパス造成の産物である開かれたグランドを合わせもち,保存と開発との2つの典
型的な事例の測定が可能である.
実験:計測場所は里山は,龍谷大学隣接里山内の田上入り口に近い,比較的明るい雑木林のコナラ樹林下とした.ここに百葉箱を設置しオンセット社製の温度・湿度自動計測装置ホボシリーズ,HOBO H8Pro,H08−032−08をセットし,気温および湿度を計測した.同じ場所の地表から約5cm程度の腐葉土層を除き,そこから10cm,40cmの部分の地温を,同社製4チャンネル外部入力ロガーH08−008−04に同社製広範囲温度センサーTMCxx−HAをとりつけて,測定した.測定開始は,2001年7月末である.グランドは当初,野球場と運動場の間の裸地としたが,工事に伴い野球場スコアボード右端のネット裏の,敷地端に移動した.
同地は熊谷川へ降りる斜面の頂上となっている.ここに,ペットボトルに白色ペイントを塗布した雨よけのカバーを地上1.5mに設置して,その中に里山内の計測に用いたものと同種の温度・湿度計測装置をセットした.地温計測も上と同種の装置を用いた.この雨よけは,オンセット社カタログで推薦の雨よけカバーとほぼ同じ機能をもつと考えられる.なお,里山の百葉箱と簡便な雨よけとの,測定値に与える影響の違いを見る意味で,里山でもペットボトルカバー中で測定を行った.
結果:里山とグランドとの気温,地温が最も異なると予想される夏季の測定結果を示すと,次のようになった.8月1日〜9月15日の10cm深さ,40cm深さとも,地温は里山では,グランドに比べ平均,3.6℃低かった.11月初旬まで,いずれの深さの地温とも,里山地温は最高温度,最低温度ともグランド地温に比べ明らかに低い.
12月初旬になると両者の差は小さくなる. 7月19日〜9月15日の昼間の気温の平均値は,里山では25.8℃,グランドでは30.2℃で,その差は4.4℃,であった.夜間の気温はこれに対してほとんど差がなく,里山が22.5℃,グランドが22.7℃であった.
これは大気が移動して,夜間には熊谷川からの冷気が入り込むためと考えられる.これに対しグランド地温は夜間でも,11月に至るまでは常に里山地温より高く,日射のエネルギーをここに溜め込むことが分かる.
以上の温度の差が何を意味するかを次に考える必要がある.簡単のために,大気のもつ気体エネルギーとして算出した.里山の樹高を20mとして,面積1m2 の体積20m3と,同じ体積のグランドの大気の体積が保持するエネルギー差を,測定した平均気温の差4.4℃に空気の比熱:0.24kcal/kg・K をかけて求めた.その結果は,20m3あたり,25.5kcal(108kJ)となった.龍谷大学隣接地の里山36ヘクタールをすべてグランドに造成した場合は,この差は9180000kcal(3.84x107kJ)となる.分かりやすいようにこれをW・hにすると,およそ10000kW・hとなる.
さらに分かりやすいように,このエネルギー差(温度差)を,クーラーで冷却して下げるとして計算すると,クーラーの効率を最大30%としても,消費電力は300000kW・h となる.日本の普通の家庭の一ヶ月の消費電力は,およそ200kW・hであるので,この電力量は約1500世帯の1ヶ月の消費電力に相当する.
グランドの地温が里山の地温に比べて高いことは,都市のヒートアイランド現象の最もプリミティブなモデルでもある.上に見た里山の気温・地温に対する効果はまた,ヒートアイランド現象を少しでも解消しようと始められている都市緑化(とくにビル屋上の樹木植栽)が,充分意味を持つことをも示すものとして興味深い.
あとがき
大学が,いわゆる先端研究に邁進して,市民の生命・生活の焦眉の問題をなおざりにしてきたことが,なにを地球にもたらしたか? これが今研究者に問われているところです.残念ながら,今なお私たち研究者は,先端研究中毒症にかかり,その甘美な麻薬の中から抜け出られません.この報告は,中毒患者によるささやかな自己批判の第一歩として始めた研究で,2001年度の龍谷大学理工学部機械システム工学科4年生の岩本光弘君の卒業研究をもとにしたものです.(江南)
ps
実は,家庭消費電力の計算が,本年はすっかり狂い,もっと多量に消費していることが分かりました.報告に載せた世帯数は半分ぐらいになるかもしれません.前の計算は,一昨年の我が家の平均消費電力量を基礎にしましたが,今年の猛暑にたまらず,長いこと使っていなかったクーラーを毎日使ったところ,なんと400kWh/月を越えてしまいました.ヒートアイランド現象の東京では,おそらく800kWh/月を越えるのではないでしょうか?まことに,人間の欲は底知れず,反省の夏でした.
つい先日の新聞に,東京都内の小学校にヒートアイランド現象対策として各教室にクーラーを設置とありましたが,排熱がさらに屋外を暑くするだけで,悪循環のきわみではないでしょうか.小学校のような,公共施設こそ,グランドにはできる限り沢山の木を植え,井戸を掘って水を流し(電動式にすることはありません.私たちの子供の頃のように,手くみ上げのポンプで,子供たちの腕力を鍛えれば,一石二鳥ではないでしょうか),屋上にも木を植え,またはソーラーパネルを設置するなど,ソフトエネルギーパスを実行しないと子供たちの未来はないことを訴えたいものです. 8月29日
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